2013/04/22

「飲めば都」を読んで飲む

北村薫さんは落語家と女子高生が謎を解くミステリ”円紫さんと私”シリーズなどが好きで昔から読んでいる作家で、キャラクターの行動や言動から伝わるつつましやかな人の気持ちの行き来が自分を省みて頭を垂れさせてくれる佳作を書く。

毎日の混んだ通勤電車や狭い世間の浮き沈みや人間関係のゴタゴタなどを経験してすり減ったココロにこれが効いてきて、こんな自分じゃダメだなあと思わせてくれる、と言ったらちょっと言い過ぎかもしれないが、実際にそういうところがある。

そんな北村さんのこの作品は、出版社の女性編集者が主人公。都さんは酒が好きだが飲まれてしまう女性で、年齢はお年頃のアラサーだ。同僚や作家先生、取引先との主に酒場でのもろもろが描かれてなんというか連続ドラマのような趣き。

作家先生の接待だけれど会社の金で飲むのを堂々と書くとは今の世相とは違うけれど、こんな仕事のやり方ってあったんだろうなあと、そのある意味のんびりしたところに呆れるが、まあ今でも出版業界はこんな感じなのかもしれない。結果としていい作品を作って世に出せればそれでよし、ということなのだろう。

あるときは大七をアンキモをつまみに飲み、
あるときはシメイを赤からはじめて白、赤とあげていく都たちは、ある日の自分たちとかぶる。

カクテルの名前を間違える上司やしったかぶりでモルトの名前を解説する編集長の姿は、酒飲みとしてちょっと喉につまる。

そんな酒飲みが起こすある意味ありきたりな事件の中に、北村さん特有の人の弱さに対する優しさや慈しみが描かれていて、ちょっとにやりとしたりグッと来たりする。


酒は人を不幸にもするかもしれないが、幸せにもする。
酒に飲まれたいために飲む酒もある。

長い人生の間中、願わくば酒を末永く飲むために身体を自愛すべし、と自らを省みながら、本を閉じた。

酒に彩られた微笑ましいエピソードを集めた一冊を読み終えて、やっぱり飲みたくなった。
ハイボールを作りにキッチンへ向かったのでした。

飲めば都飲めば都
(2011/05)
北村 薫

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