2011/05/01

【休肝日】「クレープを二度食えば」を読む

三つ子の魂百まで、とはよく言ったもので、子どもの時に好きだったもので今でも好きな食べ物はカレーライスだが、映画監督は大林宣彦で、漫画家はとり・みきである。

なので、この新刊が本屋に並んでいた時、中身も見ずに即購入。

クレープを二度食えば(リュウコミックス)クレープを二度食えば(リュウコミックス)
(2011/04/13)
とり・みき

商品詳細を見る


スラップスティックなギャグ漫画を得意とする漫画家とり・みきのセンチメンタル作品集である。

俺が彼のどの辺が好きなのかというと、その博覧強記ぶりをいかんなく発揮して台詞や設定に散りばめられる引用や(主に80年代以前のSFや特撮や漫画などがネタとなっている)、蛇行するがレールを見失わないストーリー展開、それでいて絶妙に着地するオチ。

TVブロスで連載していた「遠くへいきたい」や、巨大怪獣カニコングと東京タワーが格闘を始め剥いた林檎の皮が通り魔になりホモホモセブンが銃を乱射し万延元年に桜田門外でゴルゴ13がドウドドウ!とラストに日本が沈没する(はあはあ)「ロボ道楽の逆襲」が白眉だと俺は思っているのだが、そんなギャグ漫画界で1人荒野を行く彼にもリリカルな一面があったのね、と思って安心するのがこの短編集。

表題作は「原宿」(!)で男子中学生が女の子と出会って恋に落ちるがその子は未来から来た女の子だったというタイムスリップもので、昔の男子たちはこんなことを夢見て生きていたのね、と思うとこの時点でもう俺自身も恥ずかしさで目を覆ってしまう。

そして巻置く半ばには女子という生き物と話すのは母親かイトコのユミちゃんくらいしかいなかったあの頃(ほぼ男子校だった・・・)を思い出してもう身もだえするくらいになってしまったわけである。

大林の名作「転校生」のパロディ作品「もう一つの転校生」では、誰しもデジャビュに襲われるに違いない”鉄橋の下でのキス”(もちろんしたことはありません泣)を筆頭に、夏休み、自転車、制服、すいか、ギター、花火大会、といった青春のアイコンが勢ぞろいし、もちろん彼女は転校していってしまう(「うんにゃ、怒っとっとやなかとよ」「そぎゃんよそよそしか言い方ばせんでっちゃよかろもん」といった方言の生き生きしさにまたグッとくる)。

他には大原まり子の名作小説「銀河ネットワークで歌を歌ったクジラ」のマンガ化作品やSFマガジン掲載(リアルタイムで読んでました)の短編もあって、懐かしさにグッとこみ上げるものがありました(が、冷静になってみるとなかなかここまで読んでる人もいないだろうな、と思って冷めました)。

一時代前の話だけあってうまく出来ているとは思えないものも正直あるけれど、間違いなくここに存在している、と言えるのは好きな女の子のことが書かれているこの作品群への愛情で、それが伝わるから、この本を作りたいと思う編集者がいて、企画が通って出版されて、俺が読んだと、そういうわけだと思う。

どんな世をひねた大人(俺を筆頭として)にも身もだえするような想い出があって、何かをきっかけに思い出したりしてモヤモヤする、そんな気持ちになりたい人はぜひ読んでみるといいかもしれません。

俺も、たまにはクレープでも食べようかな、という気になりました。
関連記事
スポンサーサイト

コメント

非公開コメント