2010/07/11

【休肝日】「注文の多い料理店」を読む

疲れた時に読み返して気持ちをリセットする本は誰にでもあるかと思うが、そういう時に俺は宮沢賢治を手にとることにしていて、その語り口調と都会生活では味わえない草の匂いにちょっと心がほっとする。

ちょっと心がささくれてる最近、久しぶりに「注文の多い料理店」を再読してみた。

注文の多い料理店 (新潮文庫)注文の多い料理店 (新潮文庫)
(1990/06)
宮沢 賢治

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森に狩りに出て道に迷った二人の紳士が見つけた西洋料理店「山猫軒」。
ほっと安心して入った店には張り紙があり、その注文に従って奥に行くうちに、どんどん注文が不思議なものになっていく・・・。
誰もが知ってるこの童話、改めて読んでみて感心したところは、一定のリズムで繰り返されるシーンと、雰囲気を盛り上げる擬音。

「鉄砲と弾丸をこちらへおいてください」とか「壺の中のクリームを顔や手足にすっかり塗ってください」という妙な注文に自分を納得させながら行うたびに不安感が次第に高まってくるところ、「風がどうと吹いてきて、草はざわざわ、木の葉はかさかさ、木はごとんごとんとなりました」という一気にムードを変える擬音にすっかり感心。

また、この山猫軒、白い瀬戸の煉瓦で組まれた玄関の硝子には金色の文字。迷い込みたくはないけれど、なんだか素敵なレストラン。この辺のモダンな雰囲気も宮沢さんの特徴で、好きなのです。

いちばん読み返して心に残ったのが二人のスノッブな紳士の造形。飼い犬が泡を吹いて死んでしまったのを見て「二千四百円の損害だ」って言うところや、お互いに牽制し合いながら、「よほど偉いひとが来ているんだ」、と言いつつ罠にはまっていくところは、なんだか世間に染まった自分たち大人を見ているようだ。

現実世界の宮沢さんは失意の人生を送ったようで、この紳士たちの造形はきっとそのあたりをカリカチュアとして反映しているのに違いなく、そう思うと自分の生活で普通に出会う虚栄心であったり自己防衛だったりの本能はピュアな心から見れば相当醜く見えているに違いないと心から反省してしまう。

「紙くずのようになった二人の顔だけは、東京に帰っても、お湯に入っても、もうもとのとおりにはなおりませんでした」というラストで終わるこの小話、自分に置き換えて考えてしまう年頃になったというのは発見だったし、ちょっとショックでもあった。

宮沢さんには他にも名作が多数あって、俺は「銀河鉄道の夜」が一番好きである。
(痛切な「春と修羅」ももちろんザ・名作だが、あまりに痛々しくて俺は読めない)

この時に見たアートも印象的だった。すっかり苔むしてるんだろうなあと思うが、それもまた似つかわしいのだ。

疲れた時にまたお世話になるだろう、本棚のエバーグリーンである。
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