【休肝日】再読『美味しんぼ』
「あしたのジョー」しかり「ドカベン」しかり「おれは直角」や「ワイルド7」、「超人ロック」や「銀河鉄道999」、「ブラックジャック」などなどのド名作から、「3年奇面組」や「キンニクマン」、「ドラゴンボール」などジャンプ絶頂期漫画など、漫画好きなら1週間滞在しても飽きないはずだ。
そんな我が家の書棚の一角にはもちろん「美味しんぼ」もあり、帰省を利用して再読してみた。
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ご存じ「美味しんぼ」は東西新聞社文化部勤務のグウタラ社員山岡志郎と新入社員の栗田ゆう子がその味覚の鋭敏さを買われて新聞社創設100周年記念事業である「究極のメニュー」作りを命じられるところから始まる。
会社では居眠りばかり、暇を盗んでは競馬に精を出す今ならリストラ間違いなしの山岡は食のことになると異才を発揮。知名度をかさにきた横暴な中華店やブランドだけをありがたがるエセ美食家をバッタバッタをやりこめる。このやりこめる過程がこの漫画のなんとも痛快なところで、今まで鼻高々になっていた彼らが本当の美味しさを味わったとたんにシュンとするシークエンスに胸をすくのだ。
山岡はなんと稀代の美食家・海原雄山の息子で、この海原がことごとく山岡の前に立ちはだかることになるが、最大のライバルが父親でその父親を倒さねばならないといういささかギリシャ神話めいた主題が後ろに立ちあがるところは改めてよく出来ていると感心した。
この作品が始まった1980年代はまさにバブルの前好景気に日本がわきかえっていた時代である。
そこに警鐘を鳴らし、地に足を着いた生活を提唱したアンチテーゼとしての役割は十分に果たしたに違いないが、当時俺はまだ酒を飲めなかった年代。”からすみ”や”へしこ”、”するめいかの肝”や”トリュフ”と言われてもピンと来なかったこともあり、途中で読み進めるのを止めてしまった。
(なので、山岡と栗田のペアが結婚して子供を作り、という大河ドラマ的様相を呈していることは噂に聞いていたが知らない。弟が続けて買っているので実家にはあるはずだ。)
今回再読してみて感じたことは、プレーンオムレツを作るためには別のフライパンが必要であるとか、うなぎは炭火焼きで無ければならないとか、本物のトマトはフルーツの味がするとか、そんなうんちくを昔日に読んだことを思い出し、自分がその後した食事を思い出してなるほどとひざを打ち、しっかり自分の血肉になった気にさせてくれたこと。
また、意外にも「男気」や「意気に感ず」という考え方がしっかりある点である。
主人公の山岡を動かすのは困っている誰かの存在で、それをなんとかしたいと思う男気であり、山岡を助けてくれる誰かの行動も昔の恩を忘れない男気なのである。
しっかり身体にいい美味しいものを教えることで体調を管理してくれて、しかも男気の使い方のケーススタディを教えて生きるための指針を示してくれる「美味しんぼ」。
しばらく帰省のたびに実家の本棚をあさる楽しみが出来た。しかも100巻以上あるわけなので、1年以上は楽しめそうである。
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