2009/11/29

【休肝日】「茄子」

あなたがもし作家だとしよう。
要求のハードルが高い編集者に「茄子」をテーマに書いてほしいと言われたら、
どんなストーリーを考えるだろうか。

この話がそんな経緯で出来たのかは知らないが、
ともかく突拍子もないタイトルで、中身も千差万別の短編集。

チョキン、と茄子の蔓を切って収穫するシーンから始まる「3人」。
中年の男が「あちっ、」「トゲ刺さった」。これで1ページ。
マンガらしくない。ディテールがいやに細かい。
家に帰ると若い男女が納屋で寝ている。泊めてくれ、となるのだが・・・。

高校を卒業したものの仕事をしないでいる女の子と元同級生の男の子が河原でキャッチボールをして、茄子の入ったお弁当を食べる「ランチボックス」。

ある暑い日の自転車レースを走るレーサーとその家族や観客を描いた「アンダルシアの夏」。

いやに墨の多い原稿にいつの間にかひきつけられるのは会話の妙か、ストーリーの妙か。
現実の会話を書きうつしたら、主語が無かったり目的語が「あれ」や「これ」だったりするような自然さ、あからさまに説明しなくてもわからせる巧さ、意外にドラマティックな展開とブラックなユーモア。

そのままでは味がしない茄子が他の素材と合わさったり調理法でおいしくなるように、色んなテーマでがらりと印象を変える。

何回読んでも飽きない。その辺りもまるで茄子のような鬼才・黒田硫黄の初期代表作。

いつまでたっても我が家の本棚のエバーグリーンなのである。

茄子 (1) (アフタヌーンKC (272))茄子 (1) (アフタヌーンKC (272))
(2001/07)
黒田 硫黄

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