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2008/10/31

【スコットランド・ハイボール紀行4】たかが樽、されど樽

ウイスキー造りにはいろいろ大切なものがあって、それが味に影響を与える。
特にシングルモルト・ウイスキーであればなおさらだ。

ここでシングルモルトとは何ぞや?を解説しておこう。

いわゆるシングルモルトとは、その名のとおり単一の蒸溜所で作られたウイスキーのこと。グレンギリーならグレンギリー、マッカランならマッカランだけで作られたものだ。

それに対して、ブレンデッド・ウイスキーというのは複数のシングルモルトを核にしてグレーン・ウイスキーと呼ばれるプレーンなウイスキーを混ぜたもの(コーヒーのブレンドを思い浮かべるとわかりやすいかもしれない)。

どう味が変わってくるのかというとシングルモルトは味が個性的。ブレンデッドは飲みやすく、味が複雑。

例えばバランタインやシーバスリーガル、ジョニーウォーカーなどのメジャーなブランドはすべてブレンデッド・ウイスキーだ。

また、一般的にシングルモルトは価格が高く、ブレンデッドは安いという違いもある。これもコーヒーのブレンドと同じだ。

今回はシングルモルトを巡る旅なので、ぜいたくにも飲む酒はすべてシングルモルト。嬉しい話である。

さて、ウイスキー造りに大切なものたちについて。
どの種類の麦芽を使うか、どういう風に製麦するか、どの仕込み水を使うかといろいろあるが、意外に(というか当然か)どんな樽に入れるか、というのが重要だ。

というわけでスペイサイド・クーパレッジという樽工場へ。

スペイサイド・クーパレッジ

樽の材料となるのはオーク(ナラ)の木で、北米産のホワイト・オークとヨーロッパ産のコモン・オークが代表的。スコッチ・ウイスキーの場合、その中にシェリーを入れて熟成させたシェリー樽や、バーボンを入れていたバーボン樽を使うのが一般的で、要は1回使った樽を使うことで美味しいウイスキーが出来るのだ。シェリー樽の方はシェリーの香りが移り色が濃く味が濃厚。バーボン樽は明るい茶色で味が繊細になるそうだ。

ちなみに日本ではシェリー樽で作ったウイスキーの方が人気があるらしい。俺もシェリー樽の方が好きだ。

樽を造るのは結構大変

樽を作るのは結構重労働でしかも職人技が必要で、木を曲げたり組んだりぴったりウイスキーが漏れないようにしないといけないし、中を火で焼いたりとなかなか手が込んでいる。1人で1つの樽を作るんだそうで、みんなフリーエージェント。職人の世界は厳しい。

在りし日の樽職人たち

壁にはこんな写真も飾ってあった。みんないい顔している。

樽にもいろいろ種類があります

ちなみに石油の単位で使われるバレルとはもちろんここから。

樽だらけ

木材の高騰で樽は希少価値。それでも何回か使うとダメになるそうでその後はプランターになったりする。

俺の後ろに立つんじゃねえ!的ハードボイルドなくにさん

まるでスナイパーのようなブロガー・くにさんをシューティング!

レアものウイスキー、1万円くらいだった

スプリング・バンクのシングル・カスク・ウイスキーが売っていた。通常シングルモルトは一つの蒸溜所で作ったウイスキーをバッティングさせる(樽同士を混ぜて味を整える)が、これは一つの樽のウイスキーをそのまま詰めたもの。樽の内部を火ではなくて電磁波で焼いたもので、将来プレミアがつくのは必至だということ。どの世界でもそうだがウイスキーの世界もレアものは100万円単位で売り買いされるそうで、マニアな道も大変である。

晴れたときの感動はひとしお

こんな素敵なカフェも併設されていた。

樽が普通に使われているが、よく考えるとすごく変だ。こんな光景が毎日続いたのだが、そのうちそれが普通になってくる面白さ。それもスコットランドの魅力かもしれない。そんな旅に行きたい方はぜひこのツアーへ!

しかしまったくハイボールが出てこないが、記事内はまだ午前中。明日はいよいよウイスキーの聖地で飲むハイボールが登場!
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2008/10/30

【スコットランド・ハイボール紀行3】グレンギリーに学ぶウイスキーの造り方

ウイスキーがどうやって出来ているかを説明できる人はなかなかいないと思うが、実際見てみるとよくわかる。

簡単に言うと、麦芽(モルト)に水を加えて糖化(マッシング)、そして発酵させることでアルコールを発生させ(ファーメンテイション)、それを蒸溜することでより純度の高いアルコールを抽出(ディスティレイション)、それを樽に詰めて約10年寝かせてウイスキーの出来上がりだ(マチュレイション)。

水の沸点は100度だがアルコールの沸点は80度、そこでアルコールが気化し分離されて、再度冷やされることで純度の高いアルコールが残るという寸法。化学の世界だ。
なので、出来たばかりのウイスキー(ニューポット)は約70度と、とんでもなくアルコール度数が高い。色もこの時点では無色透明。

樽に入れることで木の香りや前に入れていた酒の風味が染みてきて、あの黄金色のウイスキーが出来上がる。

さて、グレンギリーではどう作っているかというと、こんな感じだった。

ミル・マシン

これはミル・マシンといって麦芽を砕く機械。
昔は各蒸溜所自身で麦芽を作っていた(製麦/モルティング)が、今はモルトスターと呼ばれる製麦会社から買っているようだ。やはり手間がかかるのだろう。
グレンギリーでも以前は自分のところで製麦をしていたが、今はモルトスターから買っている。

次は糖化槽(マッシュ・タン)のご紹介。

マッシュ・タン

細かくなった麦芽に温い仕込み水を入れると甘い麦汁が出来上がる。

ウォッシュ・バック

その後麦汁は酵母(イースト)を加えられることで発酵槽(ウォッシュ・バック)の中で約3日間かけて発酵していき、もろみ(ウォッシュ)に生まれ変わる。

そしていよいよ蒸溜だ。

ウォッシュ・スティル

ウォッシュはまず初溜釜(ウォッシュ・スティル)の中を通り、再度再溜釜(スピリッツ・スティル)の中を通る。その過程で不純物が取り除かれ、より純度の高い液体になっていく。

スピリッツ・スティル

内部では神々しい働きをしているスティルだが外からはまるで眠っているようだ。

スティルハウスから見る外は照ったり曇ったり

スティルハウスの内部は白壁に木の窓枠で落ち着く雰囲気。甘い麦汁の香りが眠気を誘う。

待ちに待った試飲

さて、いよいよ待ちに待った試飲。

色々飲ませていただいたが、俺にはこの21年が抜群にうまかった。

グレンギリー21年!

今から換算して21年前というと、1986年。
タイガースの優勝が1985年、ヒット曲は本田美奈子(合掌)の「1986年のマリリン」
ちなみにこの年頃、俺は大江千里のCDを買ったりしたのを覚えている。

黄金色に輝く液体は21年の時を越えて、その時の重さ(というか軽さというかそれは人それぞれ違うだろうが)を味わうのもウイスキーの魅力だ。こんなことでもなければ21年前のことなんて思い出そうとしたりしない。みんな忙しくてそんなヒマなんてない。でもウイスキーはその触媒になってくれる。

今は亡きウイスキーキャット

おじさんの膝にいるのは今は亡きウイスキーキャット。

この蒸溜所でネズミ捕りに活躍していたキャットのことをみんな忘れずに写真に飾っている。
法律の改正で新しい猫は飼えなくなったそうで、今は蒸溜所に猫はいない。でも昔の猫のことを忘れずに、こんな写真が飾られているのも気のおけないグレンギリーの魅力だろう。

日本のバーではあまり見かけないグレンギリーだが、この暖かい歓待を受けたら飲まないわけにはいかない。そう思わせる魅力のある蒸溜所だった。
2008/10/29

【スコットランド・ハイボール紀行2】話すことの9割がウイスキー

アバディーンの朝はうっすらと曇り空。

フィッシュ&チップスの夢にうなされて起きた朝、フォートウイリアムに向けて出発だ。まず第一のスポット、グレンギリー蒸留所へ向かう俺達。

アバディーンはスコットランドの東に位置し海に面した北海油田で栄えた町で、スコットランド第3の都市だ。花崗岩の産地であることから石造りの建物が並ぶ。向かう先のフォートウイリアムはスコットランドの西側の海に面している。要はスコットランド横断ルートで、その間に名だたるシングルモルト醸造所が点在するスペイサイドが横たわっているわけだ。

アバディーンも観て周りたいところだが、今回の俺達の目的はウイスキーのみ
冷血なくらいに他のスポットは無視だ。

本当はアバディーンから北に向かうとネス湖があったりしてUMAには目が無い俺は本当は行きたくてたまらなかったのだが、今回の俺達の目的はウイスキーのみ。
冷血なくらい他のスポットは無視なのだ。

ともあれ車はゴードンのドライビング・テクニックで快調に進む。広い空と一面の麦畑。

アバディーンシャイア


途中の風景はこんな感じで、ゴロゴロと俵のような大麦が転がっている。坂を転がってきたら面白いだろうなあ(怖いよ!)と1人でほくそ笑む。

一面に広がる麦畑

1時間ほど走ってオールドメドラム村にあるグレンギリー蒸留所へ到着。

グレンギリーがスコットランド最古の醸造所という説もあるらしく、とにかく歴史のある蒸留所だ。

今は行っていないが、90年代初頭までここでフロアモルティングが行われ、ピートが焚きこまれていた。当時まではピートが強いアイラ島のウイスキーの需要が高く生産が追いつかないために、本土で作る必要があったためだ。今は需要減退とアイラ島の生産量増加で作らなくなったとのこと。なので今はノン・ピーティな味だそうで、ピートを効かせたウイスキーも今後作ってほしいものだなあとみんなで頷きあう。(ピーティ?ノン・ピーティ?って何のこと?という方にはおいおい説明します。)

グレンギリーのビジターセンター

胸を張って入っていくブロガーほくとさん。

グレンギリーのシンボルは鹿だ

ブロンズの鹿がお出迎え。

熱心に迎えてくれたフランクとケニー

ずいぶん熱心に説明してくれたスタッフのフランクとケニー。右はガイドのウドさん。
今回ウドさんには大変お世話になったが話すことの9割がウイスキーのことだったことを記しておきたい。そのストイックさには脱帽だ。

蒸留所にはビジターセンターという売店併設の施設があって、通常ここで蒸留所見学ツアーがスタートする。まずスタッフからの説明を聞いたりウイスキー作りに関するビデオを見て、それから工場の中に案内してもらう寸法だ。

さっそく飲みたいところだが11時前は法律で飲酒禁止とのことで、我慢。
ちなみに今は朝の10時過ぎ。まずは蒸留所見学だ。その名の通りフランクなフランクに連れられて建物内に向かう俺達。

そして、ここから夢のようなウイスキー漬けの一週間が始まったのだった。<続く>
2008/10/28

【スコットランド・ハイボール紀行1】異文化コミュニケーション体験

酒の種類は数あれど、日本人の場合、ビール、焼酎、ワイン、日本酒の後くらいに思い浮かぶのがウイスキーだろうか。ハイボール好きになってからウイスキーを知りたくなって、ついにスコットランドへ行ってきた。

サントリーとジャルパックの企画したこのツアー
同行はグルメブロガーのくにさんとサントリーBAR-NAVI公式ブログのほくとさん。ウイスキー好き(というかマニア)の2人に便乗させていただいた6日間はとても楽しい日々だった。

さて、聖地へ向かう朝空は秋晴れ。我々の旅立ちを祝福しているかのようだ。
JL401便はそれなりに混んでいていつも選ぶ通路側は空いておらず、窓側の3席並びの真ん中に陣取る。

右隣は茶髪の男性、左隣は黒髪の女性だ。
他の列はみな真ん中は空席。
2人ともどうも俺が真ん中に入ってきたことにがっかりした様子だ。
「失礼します」の声に反応が無い。
それはそうだろうが、こっちもその気持ちは同じで、これから12時間この席に座るのかと思うとちょっと天を仰いぎつつ、何だかすいません、と一瞬思うが、別に謝る必要はない。
むしろwebチェックインをしていなかった自分に反省だ。

気をとりなおしてハイボールをオーダー。

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シーバスだ。しかし濃い。濃すぎる。

くにさんとほくとさんは前の席で談笑。

羨ましいのもあり、やはり食事の時くらいは話をしなくてはなるまいと、右を見ると、茶髪の男性はヘッドフォンをしてご飯を食べている。左の女性はしていない。

よし、左だ

「海鮮釜飯、美味しいですか?」我ながら素晴らしいアプローチだ。

首をかしげるしぐさ。おかしい。何か変なことを言っただろうか。

「I CAN NOT SPEAK JAPANESE」

日本の方ではなかった。

韓国の方だった。


しまった。

俺は英語が話せない。

しかし日本男児のはしくれ、彼女にとっては俺が日本代表
ここでひるむわけにはいかない!俺の好きな映画の話題で行こう。

「アイ・ライク・ソンガンホ

通じた。

さすがJSAやグエムルの主演を張った韓国の高倉健

この調子でなんとか12時間、日本男児の名目は保ったつもりだが、彼女の好きな映画は「ジョゼと虎と魚たち」で、良くこの映画を韓国で見たなあと感心したが、自分が映画好きで本当に良かったと思った。

降りるときには「あなたの隣で本当に良かった」と映画みたいなセリフをいただいた(たぶん)。

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ともあれ、飛行機は10000キロをひとっ飛び、あっという間にシベリアを越えていく。
飛行機ってすごいと改めて実感。
陸路だったら何日かかるのだろうか。

ヒースローについて最初に飲んだのはハイボール。
空港のカフェにてジェイムソン&ソーダ。
薄い。
こっちの人はソーダ割りをあまり飲まないのかもしれない。という恐ろしい憶測が頭をかすめる。まあともあれ、無事ロンドンに着いたことを喜ぶ3人。

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アバディーンまではブリティッシュミッドランド航空(bmi)。機内はこんな感じで横列3席。小さいけれど新しい機材だ。

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到着してガイドのウドさんと運転手のゴードンと合流。

ウドさんは滞在20年以上のベテラン日本人ガイド。ウイスキーのことなら何でも聞いてという女性。
ゴードンは背も横幅も大きなナイスガイ。

ゴードンが腹減ったというのに乗っかって、ホテルに行くまでに夜食(というか夕飯)を買うことにする。覚えておこう、このかわいい(というか不気味な)魚を見かけたら、フィッシュ&チップス屋だ。

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どんな代物だったかはくにさんのレポートをご参照。

はい、覚えておきましょう。

フィッシュ&チップスはシェアが最適。1人で1つはトゥーマッチ。しかも夜食には。

帰ってきてからも不思議なのはスコットランド人の食習慣だが、日本を想像していたら全く違う。夜、小腹が空いたからラーメンでも行くか、というのはありえない。
すべてフィッシュ&チップス。夜中に超オイリー。しかもすごいボリューム。

スコットランド恐るべし。

ともあれ、そんなわけで、この調子でこれからウイスキー漬けの旅を毎日レポートします。

よろしくお願いします。
2008/10/26

ハイボールとマスタード(粒)

マスタードは辛いほうがいいというのが持論なので、粒マスタードが食卓にのぼることはほとんどなかったのだが、辛くないという理由以外にもう一つ、それは粒マスタードは結構お高いということ。しかも少ないし。

でもそんな悩みは簡単に解決!ここに行けば!

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グレンギリーで買ってきましたウイスキー・マスタード!たっぷり入って3ポンド75セント!(今600円ちょっと)

ポトフにつけていただきます。
ほのかにウイスキー風味。でも食べてるうちにわからなくなる。
なぜか。それはハイボールを飲んでいるから
(奥にちらっと冷凍庫から出した形跡残る角瓶が!)

しかしポトフ=西洋風おでんに粒マスタード、おでんに和からしって出来すぎです。

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ウインナーにつけても抜群でした。