
土曜日昼の錦糸町は雨だった。
場外馬券場に向かうご年配たちは雨で出足が鈍るのか、はたまた穴馬券を狙っていつも通り混んでいるのか。俺はそんなことを考えながら『三四郎』に向かった。
焼き場のガラス窓から中を覗き、白いコの字カウンターに空きがあるのを見定めて引き戸を開ける。
いらっしゃい、という声に促されたが、妙に店内が静かである。
店は7分の入りだが、誰の話し声も聞こえない。
見渡すとご年配たちの目線は一点集中。
店の奥のTV画面ではコーナーを周った馬群がゴールへ突進していた。アナウンサーの声に気が付いた。
全員競馬ファンだった。それもほとんど1人客。ハイボールを飲みながら競馬観戦。ファンにとっては最高だ。
レースが終わると緊張感が溶けていった。
焼酎ハイボールかレモンハイか。もちろん前者だろう。焼酎ハイボール一点買いだ。